けあぷらの森

地域とつながる施設を。理念は家族愛。特別養護老人ホーム 旭ホーム施設長 漆原恵利子さん

横浜市今宿地域ケアプラザの運営母体である社会福祉法人漆原清和会。特別養護老人ホーム旭ホーム (旭区川井本町)を昭和54年に開所し、平成13年よりケアプラザが始動。
旭ホーム施設長の漆原恵利子さんを訪ね、話を聞きました。
旭ホームの玄関先に現れた施設長は、セーターにパンツ姿というラフな格好。
写真撮影もあると事前に話してあり、ばっちりお化粧のスーツ姿を想像していたところ、フットワーク の軽い、気さくな施設長というスタイルで、取材の緊張感がすっかり和らぎました。

法人設立のきっかけ

特別養護老人ホーム 旭ホーム

施設長の父親は耳鼻科医、母親は眼科医。3人兄弟で、肢体不自由の長男の存在がきっかけで、 社会福祉法人を立ち上げ、高齢化社会を見据え、特別養護老人ホームを開所しました。

昭和63年、体調の悪い母親に代わり施設長になったときは、20代後半。施設長とはこうあるべき、 というような指導を受けたこともなく、「常にこれでいいのかと模索してきました」

理念は「家族愛」

旭ホームの玄関で

法人に理念を問われるようになったのは、介護保険がスタート(平成12年)した当初のこと。法人立ち上げのきっかけが家族である兄にあったことから「家族愛」としました。
「利用者さんのためにどうするか考えたとき、自分の親だったら、家族だったらどうするか、立場を置き換えて考え、接してほしい」そんな思いがこもっています。

地域とつながりたい

地域とつながる事業を手掛けたいと、二俣川ニュータウン、希望ヶ丘東、笹野台を範囲とする横浜市今宿地域ケアプラザの運営に手を挙げました。
その頃、施設長の住いは、二俣川ニュータウン。昭和30年代からの分譲住宅地で、この先、高齢化に直面する地域でした。地元意識もあり、意志を固めたのですが、出鼻をくじかれることに。
横浜市によるデイサービス送迎車の無償貸与が打ち切られるという突然のハプニングにもめげず、「地域とつながりを深めたい」と、オープンにこぎつけました。

旭ホームでの顔

漆原さん仕事場

勤務日のスケジュールを尋ねると、「なにもしない施設長です」と謙遜。職員を信頼して任せていることの裏返しです。 訪ねたのは月曜日。金曜日に風邪で早めに帰宅し、土日を休み、出勤したところ、午前中は報告で終わってしまったとのこと。
利用者と同じ昼食を、一階の食堂で職員と一緒にとる気さくな施設長ですが、「職員が精いっぱいやってくれていれば、何があっても責任をとる」と頼もしい言葉。

自然を愛する理事長

旭ホームを彩る花々

施設長の父、医師で理事長の漆原弘さん(89歳)。一緒にインタビューを予定していたのですが、体調を崩し、残念ながら欠席。
毎年、ケアプラザの職員に畑で採れた栗や柿など自然の恵みを届けてくれますが、その作業は大変なもの。

例えば、栗は、5月に虫がつくので、虫がついた枝をハサミで切り、9月から10月には、落ちた栗を見つけやすいように、草刈りをします。
「咲いて初めて知ったのですが・・・」と紫陽花のエピソードも。旭ホーム前の道路沿いに、梅雨になると見事に咲く紫陽花。実は、理事長が、挿し木で増やし、丹精こめて苗から育てたもの。

雨の少ない年。車の往来が激しい道路沿いなので、交通量が少なくなる夜間に、道の真ん中まで出て、ホースで水やりを始めた理事長を、あわてて止めて、職員で水やりしたこともあったとか。「父にとって紫陽花も栗も、植物というより生き物なんです」

人柄を伺うにつけ、是非、またの機会にお会いしたくなりました。

子供が安心できる場を

今、気がかりなのが、家族同士のつながり「家族力」。家族力が弱まり、介護が社会問題化したように今、虐待など子どもの問題が大きくなっています。今後の展開として、親と一緒に暮らせない子どもが安心できる施設作りを考えています。

早くから新しい取り組み

セラピードッグのようす

一見、地味な旭ホームですが(失礼)、実は、新しい取り組みを早くからしてきました。
例えば、ホームページ。介護保険を意識し、施行前年の平成11年に、開設しています。次に、犬や猫など動物との触れ合い。今では、多くの人が知るセラピードッグですが、昭和62年、動物が施設訪問し、利用者と触れ合うプログラムは、珍しいものだったはず。
それもこれも全て、人と人との出会いから。アメリカ、カナダ、ニュージーランドなど福祉施設を見学し、学んだことが生かされ、すんなり訪問開始となりました。今でも、毎月、日本動物病院福祉協会の獣医師やボランティアさんが、動物を連れてやってくるのを、利用者は楽しみにしているそうです。

ハロウィンで魔女に変身

ハロウインのようす

旭ホームで大切に育てている行事が、もうひとつ。ハロウィンです。利用者を気遣い、暑い盛りの夏祭りを10月に移行し、文化祭と称し、地元野菜の販売やバザーと一緒にハロウィンをスタートしたのが、平成12年。
まだ、ハロウィンの認知度が低く、アメリカから飾りを購入したそうです。「似合う」と言われて、仮装で魔女になること13回目の施設長。「最初は恥ずかしくても、みんなが驚いてくれると、気持ちが変わってくるんです。仮装って人間の心理にかかわります」

ケアプラザを通して輪広がる

インタビュー中の漆原さん

金環日食という天空ショーをきっかけに、ケアプラザを通じて、地域とのつながりも深まりました。ケアプラザで活動するデジカメ教室のメンバーが、当日、旭ホームの屋上で撮影会を開催。いまひとつの天気だったにもかかわらず、その瞬間に、雲の間から太陽が現れるという奇跡が起きました。撮影された写真は、旭ホームの玄関に飾られています。

取材を終えて、会議室を出ると、取材中に聞こえてきた、利用者さんや職員のにぎやかな声の理由が分かりました。その日は、月、一度の誕生会。偶然、目の合った利用者さんが、知らない私に、にこやかに会釈してくださいました。まるで、家族のように。

(平成25年1月記)