けあぷらの森

ファイル7 All for you. It's my pleasure.―すべてはあなたのため。それが私の喜び―大道芸人 小川貴大さん

あるときは親子でリズム体操に参加し、カラフルな風呂敷を抱っこひも代わりに子どもを抱いて帰る粋なお父さん。
あるときは掲示板のボランティア情報を見て調理室の包丁を研ぐ器用なボランティアさん。
そしてあるときはサマーフェスタで人気者の大道芸人。
そんな百面相のヒロさんこと小川貴大(たかひろ)さん(29歳)をインタビューしました。

みんな集まれ! ヒロさんの大道芸が始まるよ!

平成25年の暑い暑い夏。ケアプラザのサマーフェスタに、いつもと違ったプログラムが登場しました。
始まり始まり! 「野毛の大道芸」ならぬ「ヒロさんの大道芸」!
中庭に子どもや親子が集まってきました。
本日のヒロさんは、黒で統一したハット、ベスト、パンツに赤いネクタイと靴といういでたち。
バルーンを膨らませてバイクを作ったかと思えば、赤い玉を右から左へ瞬間移動させ、観客のポケットから取り出したり、空っぽになったはずのカップをコーラでいっぱいにして観客を「アッ」と言わせました。

観客を巻き込んで

なんてったってトークが面白い。
笑っているうち巻き込まれ、気が付いたら観客席からヒロさんの隣に立っていた男の子。
ヒロさんが人さし指の上で回している皿を、そーっと男の子の指に移すと…
緊張している男の子の人さし指の上で皿はくるくる回った!
「ワーッ」と拍手と歓声が!
びっくりしたのが1本の太いローラーの上に板を乗せてコップを並べ、さらにその上に乗せた板に立ったとき。
そんな不安定な状態で、観客の男性が投げる剣をしっかりつかんだときは心底ホッとしました。

雨宿りした児童館で

大道芸人としてケアプラザデビューを果たしたヒロさんが、大道芸の扉を開いたのは高校1年生のある雨の日。
それはまるで青春映画のワンシーンのようにスタートしました。
舞台は広島県府中市。急に降り出した強い雨。
同じ高校に通う幼なじみと2人で雨宿りに飛び込んだ児童館で、ジャグリングサークルが練習中…
翌週に2人ともサークルに入会。いろいろな道具を使ったジャグリングの手ほどきを受け、地域の祭りや児童館のイベントで活躍することに。

アルバイトでテーマパークのエンターテナーも

高校3年生のときに、コンビを組んでプロの大道芸コンテストに出場し、面白い高校生と注目されました。
岡山の大学に在学中は、募集もないのに履歴書を書き、パーフォーマンスの道具でアピールしたのが認められ、倉敷のテーマパークでエンターテナーとしてアルバイトしたことも。
システムエンジニアとして大阪で就職、さらに東京へ転勤後も、土日を利用して広島の児童館の祭りやイベントに大道芸人やお手伝いとして参加し、今でも帰省ついでに児童館でショーをすることもあるそうです。

楽しい観客とのコミュニケーション

大道芸の魅力はステージのショーと異なり、芸人と観客が一体となりみんなでショーを作り、楽しくなれること。
知らないおじさんに話しかけられたり、普段話さない人ときっかけができるのが嬉しいんだとか。
「ファンになって何回も見に来てくれたり、撮影した写真を収めたDVDをプレゼントされたり、子どもが似顔絵を描いてくれたことも」とニコニコ。
でも、ショーの最中、ローラーに乗ったとき、コップが割れてしまったり、バランスを崩して落ちたときはちょっとドキドキでした。
得意技は、5つのボールのジャグリング。ボールをバウンドさせる難しいジャグリングを練習中で、交差させたパイプに乗ったり、はしごを使ったバランス芸にも挑戦しています。

育児を楽しむイクメン

現在、共働きで3歳の女の子と8カ月の男の子の良きパパです。
子どもとかかわる時間がもっとほしい、いっぱい遊んであげたい、そんな思いから平成25年の3月から6月までの3か月間、育児休業を取得しました。
いわゆるイクメンですが、「料理、洗濯、掃除など夫婦で出来るときに出来ることをやるだけ」と、あくまで自然体で気負いがありません。
子どもを公園に連れてゆき、お母さんたちと一緒に砂場で過ごしたり、布おむつをまめに替えたり、トイレトレーニング、料理や入浴など日常を楽しんだことが貴重な体験に。
「できないことは授乳だけ」と、なんとも頼もしい言葉。

工夫して手作り

大道芸の道具

大道芸を見ることはもちろん、カメラや物作りと趣味も多彩。
革の端切れがあれば、縫って財布を作ります。
だから大道芸の道具を入れた大きなボストンバッグから、出てくる出てくる手製の小道具たち。
例えば、「SHOW TIME」と手書きされた看板。
大学でデザインを専攻していたこともあってセンスは抜群です。

モットーで生き方に通じるもの

All for you. It's my pleasure.
大道芸の恩師から学んだ精神で、大道芸人にとって最も大切なことです。
直訳すると『全てはあなたのために。それが私の喜び』

「ショーを見て喜ぶ観客。その笑顔を見るのが芸人の喜び」と小川さん。
それは、大道芸だけの話ではありません。
例えば、システムエンジニアとしての仕事でも、お客さんの望んでいることを拾い上げて形にするのが楽しいんだとか。
その精神が家庭でも生かされ自然とイクメンへとつながるのでしょう。

ローラーの上でバランスをとる 中国ゴマ ボールでジャグリング

取材当日、写真撮影のためにショータイム用のスーツ姿に小道具が入ったボストンバッグを引きながら、8カ月の息子さんを抱っこして現れた小川さん。
そんな目立つ格好ですから道中、声を掛けられ会話が弾むことも多いそうです。
そこから地域とつながり、イクメンはイキメン(域メン)へ…
すでに他のケアプラザや子供会からもひっぱりだこです。
次回のサマーフェスタが楽しみですね。

(平成26年3月記)