けあぷらの森

ファイル12 おふくろの味でみんなを笑顔に 配食ボランティア「わかたけの会」代表・料理教室講師 福士宵子さん

「くいしんぼうで、『食べたいな』が『作りたい』に結びつく」と話す福士宵子(ふくししょうこ)さん(80歳)。
きゃしゃな体つきと繊細な心遣いで、配食ボランティアの代表や料理教室の先生を務めてきました。
「一番好きなことは?」と尋ねると「食事作り」と即答。
「食」を柱に人生を豊かに過ごす秘訣は?

キンピラの思い出

配食ボランティアの弁当作り

配食ボランティアの弁当作り

満州から父親の郷里、盛岡に家族5人で引き揚げてきたのが小学5年生のとき。
祖母や叔父、叔母と8人家族で、大学(教育学部)まで過ごしました。
早起きして火を起こし、食事や弁当作りをする祖母を病弱な母親に代わり手伝ったそうです。
中学の家庭科でキンピラを作ったときのこと…
ゴボウとニンジンのせんぎりを先生に褒められ、「すごくうれしかった。キンピラは我が家の定番のおかずで、よく作っていた」と。

手作りで豊かなとき

マドレーヌ作り

マドレーヌ作り

「気が付くと作り始めている」と言うように、根っからの料理好き。
まだ、炭のコンロだった当時。
コンロに乗せて使うパン焼き器は、真ん中に煙突のついた鋳物の鍋のような形だったとか。
フスマやトウモロコシの粉を使ってパンやケーキを焼きました。
炭の火力を調整したり、パンをひっくり返したりと、楽しそうな姿が目に浮かぶよう。
今は朝、パン食ですが、時間に余裕のあるときは、手で生地をこね「古いオーブンで焼くの」といたずらっぽい目。
全自動のパン焼き器もある時代に、びっくりされることもありますが、丁寧に手作りして出来上がったとき「なんとも豊かな時間」と。

40代で再び学生に

自宅のキッチンに、「Madame Shoko Fukushi」(マダム ショウコ フクシ)とフランスから届いた免状が飾ってあるそうです。
夫の転勤で越してきた横浜から、目白にある人気講師の製菓教室に、月1回、10年ほど通った証だとか。
とことん学ぶ姿勢は大学編入へと発展。
食について専門的な知識を深めたいと、家政学部食物学科に編入したのは、一男一女が大学生になった40代のときのことです。
「やりたいなと思うことに遅いことはない」と奮起したものの、幅広い年齢層の多彩な仲間と一緒に勉強するのは「苦しいことのほうが多かった。試験におまけはなく、なんでこんなことしたんだろう」と気弱になったこともあったとか。

食のボランティアに

入賞した「鶏むね肉のゴマみそ焼き弁当」

入賞した「鶏むね肉のゴマみそ焼き弁当」

4年間の勉強を修了。学んだことで何かしたいと食生活改善推進員に。
通称「ヘルスメイト」と呼ばれ、食を通じて地域の健康づくりを手伝うボランティアです。
平成元年、越してきた旭区東希望が丘で精力的に活動し、12年に横浜市長表彰、21年に旭区長表彰、26年に神奈川県知事表彰を授与されました。
「作ってみようかな」と挑戦する気持ちから、料理コンテスト応募へ。
「はま菜ちゃん料理コンテスト」では「野菜いろいろ大根もち」、「わが家自慢のチキン弁当コンテスト」では「鶏むね肉のゴマみそ焼き弁当」が入賞しました。

お弁当がご縁で仲良く

赤飯弁当 回収する弁当箱にはいつも手紙が…

赤飯弁当
回収する弁当箱にはいつも手紙が…

平成13年1月に「わかたけの会」を発足し代表に。
「わかたけの会」は、希望が丘東地区在住の高齢者に月2回、手作り弁当を昼に届けるボランティア団体で、折しも7月にオープンした今宿地域ケアプラザの調理室を利用することになったのです。
旬の食材を彩りよく収め栄養バランスのとれた弁当は好評。
いつも25名ほどの利用者があり、午後に回収する弁当箱には「開けてびっくりした」「おいしかった」と手紙が添えられます。
うれしかったのは、利用者が声を掛け合い2〜3人が一つの家に集まり、一緒にお弁当を楽しんでいるのを知ったとき。
「お弁当をきっかけに集まる楽しみが健康につながる」と目を細めます。

ボランティアの原点

イベントで「わかたけの会」の活動報告

イベントで「わかたけの会」の活動報告

「ご飯を食べさせてもらったこと忘れません…」
今年の正月、シアトルから届いた手紙を娘に見せ、「お母さんのボランティアの原点だよね」と言われました。
まだ中区に在住だった頃。
近所に両親を亡くし、ひとり残された高校生の女の子が住んでいたそう。
「よかったらうちにご飯食べに来ない? 5・10・15…30の日は、声を掛けないけど遠慮なく来て」と誘ったところ、訪ねて来るように…
「うんとは入りこまないけど、ちょこっと見えるところだけ」と謙遜しますが、実は彼女用のメニューを考え、バイトに忙しい子どもは不在のまま夫と3人で夕げの食卓を囲んだり、3年ほど続けたとか。
多感な女子高校生が構えることなく自然に足を運べる場所。
福士さんち、はそんな温かいところだったのでしょう。
その高校生も今は二児の母となり、シアトルに暮らしています。

おもてなしの心

自ら撮影した1日分のメニュー

自ら撮影した1日分のメニュー

横浜の作品展に出展した写真「盛夏」

横浜の作品展に出展した写真「盛夏」

配食サービスの献立がいつも頭の中にあり、新しい料理本やネットを見たり、外食して「これいいな」と思うと作ってみます。
友達や子どもが滞在するときは事前に献立を全て考え、記録に残し、次の来訪時に同じメニューにならないよう気遣うのが福士流おもてなし。
ひとり暮らしをして10年になりますが、3年前に病気で胃を3分の2ほど切除してしばらくは、自分のための一週間分の献立を作り、朝昼夕の食事をカメラに収めたことも。
健康には運動も大切と、ウォーキングも楽しんでいます。

目指すは…

豆乳小倉かん(左上)、うぐいすもち(右上)
いもようかん(左下)、梅かん(右下)

「私の駄菓子」と差し入れてくれたカリントウ。
かみしめて味わうと、ほのかにゴマとゴボウの香りが。
今、着々と準備を進めているのが「おやつのレシピ集」作り。
草だんご、わらびもち、いもようかん、マドレーヌなど、配食ボランティアの弁当には必ず手作りデザートが添えられ好評です。
「自分で撮った写真を入れて一冊にまとめるのが目標」

ケアプラザ主催の男性料理教室から「おつまみ道場」が生まれ、おやつ作りを教えてと乞われ「だんごの会」を発足。
他のケアプラザで、二つの男性料理教室をもちながら、デジカメ教室に参加し、カメラの腕を磨いています。
出来上がった料理の写真撮影まで美しく仕上げる料理家は、実は華道歴も長く「機会があれば花をたくさん撮りたい」と。
料理と花でおもてなし。
福士さんち、遊びにいきたいなあ…

(平成27年5月記)