
横浜市今宿地域ケアプラザ廊下ギャラリー出展者
小森政好さん
75歳で前立腺がんを患いながらも、趣味や仲間作りに積極的な小森政好さん(80歳)。
住み慣れた宮崎を離れ、横浜の長女と同居してまだ4年というのに、地域のカラオケ会や歩こう会に参加し忙しく過ごしています。
そのきっかけになったのが横浜市今宿地域ケアプラザで月1回開催される「歌声喫茶」でした。
広がる「歌声喫茶」の輪

歌声喫茶
「歌声喫茶」は、平成19年に横浜市今宿地域ケアプラザが主催し人気となり、毎月第1土曜日には、多目的ホールが満席になるほどの盛況ぶり。
アコーディオンの生の演奏に合わせ、楽しそうな歌声が響いてきます。
そんな「歌いの場」に小森さんが初めて参加したのが3年前。
みんなに迷惑をかけないようにと、最後列に座り大きな声で合唱しました。
学生時代を過ごした東京で歌声喫茶に通い、寮歌やロシア民謡を歌っていた音楽好き。
結婚後は、自宅に防音室を作り、子どものピアノ伴奏に合わせ家族で合唱を楽しんだとか。
歌いっぷりが認められカラオケ会に入会

合同歌声喫茶
その歌いっぷりが認められたのでしょう。
メンバーの1人に声を掛けられ、老人クラブに入会し、カラオケ会に参加するようになりました。
ところが、老人クラブのカラオケ会は大人数のため、1人がその日に歌えるのはせいぜい3曲。
物足りなさを感じ、他のグループ2つにも所属。
「月4回のカラオケ会で12~3曲は歌える」とうれしそうな小森さん。
演歌好きが多い中、抒情歌やフォークソングを好み、「青葉城恋唄」「空に星があるように」「白いブランコ」が十八番です。
優しい草花の絵

廊下ギャラリー
横浜市今宿地域ケアプラザに足を運んだのが縁で、趣味の水彩画を廊下ギャラリーに展示することに。
優しい色合いの草花の絵は趣味の域を超え、見る人の心に語りかけます。
それは、あるときはツバキ、ウメ、アジサイ、アザミ、葉の間に見え隠れする赤いイチゴ、そしてあるときはゴーヤだったり。
描くものは変わっても、変わらぬ優しさが伝わり観る人の心をとらえ離しません。
コスモスの作品

コスモスとネコジャラシの作品
取材当日にお持ちくださったのは、淡いピンクを背景に描かれたコスモスとネコジャラシの作品。
少しずつ構図や色合いを変えて何点も描きましたが、「譲ってほしい」という人が現れ、手元にあるのはこれだけ。
繊細なタッチのネコジャラシが今にも風に揺れそうな…
絵は心で描く
小森さんにとって「絵は人生そのもの」
忘れられないエピソードがあります。
宮崎で18年ほど絵の指導を受けた画家のこばやし雅子さんの作品でキキョウとオミナエシが描かれた「秋の景色」を模写したときのこと。
人に譲ったときは「いつでも同じものが描ける」と思っていたのですが、実際描いてみると、構図や下絵は同じなのに、どうしても満足できる作品に仕上がりません。
思い切って先生に電話で尋ねてみると…
「今の小森さんは、以前に比べて技術を磨き、知識も豊富。でも、あの絵を初めて見たときの感激や感情を忘れている」と言われ、絵は心で描くことを思い知らされました。
それ以来、花を見たときの感激をどうやったら描けるか模索し、「気持ち」を表現することにウェイトを置くようになりました。
「心のもち方は病気の治療にも大切で、それは人生観につながります」
着物を愛し、自ら縫う

着物について語る小森さん
夕食後には今も着物を愛用する着物好きの小森さんですが、シーズンが終わると糸を解いて仕立て直すまでをご自分で楽しみます。
きっかけは奥様が肩を悪くし縫物ができなくなったこと。
諦めきれずに奥様に教わり浴衣、単衣、袷長着と縫えるようになりました。
飛騨高山の栂尾紬を購入し、裁断からしたこともあったとか。
子どもの頃、父親と入浴後、着物に着替え散歩に出かけ夕食をとり談笑したことをよく思い出します。
「冬は温かく、夏は涼しい。着慣れたら洋服は着られない」
好きな言葉
わざわざ万年筆でしたためてくださったのは3つ。
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」 道元
「敬天愛人」 南洲
「赤きもの赤しと云はであげつらひ、五十路あまりの年をへにけり」 西田幾多郎
道元の句は、自然の美をありのまま、素直にめでる気持ちを表現した句で、絵を描くときの姿勢につながります。しおりに筆で書いて使っているそうです。
健康法

合同歌声喫茶2012旭公会堂展示
がん治療に選んだのは、玄米菜食が中心の食事療法。
アルコール類は月に1回、日本酒を1.5合かウィスキーを150CCと決めていますが、つまみを食べ過ぎないようにするのがなかなか難しいと。
朝は白湯に乾燥ショウガ粉を、10時か3時には紅茶にすりおろしたショウガを入れて飲み、体を温めるよう心掛けています。
平成22年より毎年5月に、旭公会堂で旭区全館のケアプラザが参加し開催されるようになった「合同歌声喫茶」。
平成24年の「合同歌声喫茶」では、歌声喫茶をきっかけに元気に過ごすシニアとして大勢の前で、仲間と歌う楽しさや絵を描くときの心のもち方について発表してくださいました。
当日、旭公会堂のホール入口に飾った15点ほどの水彩画は全て、譲ってほしいという人たちの手元へ。
「その方たちとの交流もまた楽しい」と小森さん。
来年の廊下ギャラリー展示に向けて、現在、新しい作品を制作中です。乞うご期待!
(平成25年11月記)